【リアルテックHD/藤井】日本から世界へ。インパクト投資が切り拓く、ディープテックの新たな可能性
企業インタビュー
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2021-11-11
【リアルテックHD/藤井】日本から世界へ。インパクト投資が切り拓く、ディープテックの新たな可能性

2015年の設立以降、地球と人類の課題解決を目指す研究開発型スタートアップへの投資・育成を行ってきたリアルテックホールディングス株式会社(以下、RTHD)。2020年4月にはリアルテックファンドの国内3号ファンドとして、日本初となるディープテック系インパクト投資ファンドの運用がスタートしました。


今回は取締役社長の藤井昭剛ヴィルヘルムさんに、インパクト投資ファンド設立の背景や日本におけるディープテックの可能性、そしてこの業界で求められる人材について語っていただきました。


藤井昭剛ヴィルヘルムさん(Akitaka Wilhelm Fujii)

東京大学大学院修士課程(国際協力学専攻)修了。気候変動対策イノベーションのインキュベーション事業やアクセレレーターを運営するEIT Climate-KIC(株)に入社。複数部署の立ち上げに関わり、チーム設計・採用・チームビルディング・評価など人事業務に携わる他、2017年には全社の人事制度改革タスクフォースの責任者となる。また、出資先の環境インパクト評価も担当し、幅広い気候変動対策イノベーションに触れる。

2019年3月、チームデベロッパーとしてリアルテックファンドに参画。出資先スタートアップの成長を加速するための採用・チームビルディング・人事制度設計等、幅広い人事業務のハンズオン支援を行う傍ら、リアルテックファンドのエコシステム形成に貢献。2020年には取締役社長に就任する。


社会に対してスタートアップの価値を可視化する

ーー国内初となるディープテック系インパクト投資ファンド設立の背景について教えてください。

RTHDは地球と人類の課題解決に資する研究開発型スタートアップを応援する目的で、2015年に1、2号ファンドを立ち上げ、これまで5年間シード・アーリーフェーズのスタートアップに出資してきました。もともと社会的なインパクトとファイナンシャルリターンを両立させるべく始めた会社だったので、IRRやCoCなどのファイナンシャルリターンでの指標のみならず、社会課題の解決ポテンシャル・実績も可視化したいという想いから、インパクト投資ファンドの設立に踏み切りました。


ーーDT領域に特化したのはなぜでしょうか。

言語・文化的要素が強く、海外の横展開ハードルが高いSaaS/ IT系と比較すると、ディープテック(以下、DT)は国境を越えて波及していけるのが強みだと思っています。地方発でも売り上げの大半は海外からというDTスタートアップも存在しています。


RTHDを設立した5年前に比べると、DT領域のプレーヤーは増えているものの、シード・アーリーフェーズとなるとだとまだまだ少なく、支援者も足りていないのが現状です。だからこそ、今回のファンドでもこれまでの知見を活かしながら、社会的に必要とされている領域にアプローチしていきたいと考えていました。


シード・アーリーのスタートアップを評価する難しさ

ーー今回インパクト評価を導入したことにはどんな狙いがあったのでしょうか。

我々は2015年に立ち上げた投資ファンドから、理念を持ったスタートアップに絞って投資してきましたが、スタートアップが持つ社会的な意義や価値を可視化できてはいませんでした。そのため、きちんと可視化して発信できるような体制を整えた方がいいのではないかと思い、今回インパクト評価を導入することになりました。 また、 シード・アーリーフェーズに特化したインパクト投資ファンドは世界的にも珍しく、我々が船頭を切ってこの領域にチャレンジし、インパクト投資家を引き込みたいという狙いもありました。


ーーなぜシード・アーリーフェーズのインパクト投資ファンドは国内で少ないのでしょう。

それは、まだプロダクトやサービスが立ち上がっていないスタートアップが多く、評価が難しいからです。


例えば、太陽光パネルのインパクト評価は、パネル1枚あたりの環境負荷軽減を数値化できるので、比較的簡単に計算できるのですが、何をつくるか・どう売るかも決まってないスタートアップは、仮説を立てながら評価しなければなりません。何にフォーカスし、どのように今後のストーリーを描くかで評価も異なるため、時間も知恵もかかります。


一方で、パラダイムシフトを巻き起こすためには、破壊的イノベーションに挑戦するシード・アーリースタートアップを応援することが必須だと我々は考えております。


ーーインパクト投資はどのような指標で評価するのでしょうか。

「プロダクトやサービスが人に何をもたらすのか」は大きな指標の一つです。しかし、そこに行き着くまでのロジックや計算はとても複雑なので、評価する側がその領域での知見を持っていることは重要ですね。


今回のインパクト投資ファンドでアドバイザリー契約を結んでいる三井住友信託銀行では、社内に企業の取り組みを評価する専門チームを抱えていますので、大変心強く感じています。


気候変動の解決を目指して

ーー藤井さんのこれまでの活動を拝見していると、社会課題に対する思いが軸になっているのだなと感じています。

私は幼少期から人が生まれる場所や時代によって、享受できるものやチャンスが変わることに違和感を持っていました。世界で深刻な格差問題をなんとかしたいという思いが、過去から現在の取り組みにおいても大きなモチベーションになっています。特に気候変動について強い課題意識を持っているので、RTHDにジョインする前はヨーロッパにある「EIT Climate-KIC」で気候変動分野のプロジェクト推進に携わっていました。


ーー気候変動にフォーカスしたのはなぜでしょうか。

気候変動は全人類のなかでも、特に途上国の貧困層をはじめとした社会的弱者が大きな影響を受けやすいからです。RTHDでも前職での経験をもとに、地球規模で環境問題と向き合いたい思いが強くあります。


ーー藤井さんがRTHにジョインしたのは今から2年前ですよね。翌年には取締役社長にも就任されましたが、どのようなキャリアプランを描かれていたのでしょうか。

私としては社長になりたいとは一切考えていなかったですね(笑)。単純に自分のやりたい社会課題、つまり気候変動をスタートアップ×テクノロジーで解決できればという思いで入社に至っています。このRTHDでこれに貢献できるのなら、与えられるミッションにこだわりはありませんでした。


ーーその思いとインパクト投資ファンドの設立には何か接点があるのでしょうか。

世界ではすでにベンチャーキャピタルにもインパクト投資の潮流が生まれつつありますが、日本ではまだまだマイナーです。来た波に乗るだけではなく、自分たちで波をつくる側にもなりたい。だからこそ、日本でのインパクト投資に挑戦したいと考えていたんです。


KPIを決め、スタートアップに伴走する

ーー今回のインパクト投資ファンド設立の発表にあたり、投資者やほかのステークホルダーからはどのような反応がありましたか。

投資者からの反応としては、インパクト評価がファンドにどのような影響をもたらすのか、今はまだ様子を見ているように感じています。しかし、スタートアップにとっては、自分たちのプロダクトやサービスにどんな可能性や価値があるのかがしっかり評価されるということで、ポジティブな反応が多かったですね。


インパクト評価は、経営判断に組み込んだり、ユーザーとのコミュニケーションツールとして使えたり、さらには上場時にもプラスになるなど、さまざまな効果があると考えています。例えば、「U-MAP」という電子機器の熱問題に取り組む名古屋大学初のスタートアップでは、自分たちのプロダクトがどのような社会的インパクトをもたらすのかシミュレーションを行っているのですが、その結果をインパクト評価だけではなく、販売時でのエビデンスとしても活用していく予定です。


ーーメリットがある反面、難しいと感じたことはありましたか。

シード・アーリーは変化が多いフェーズでもあるので、インパクト評価は思った以上にすんなりと進まないのが難しい点ですね。しかし、そこで無理に判断を急ぐのではなく、この企業が何をやりたいのかきちんと深堀りすることが大事。投資委員会でもその部分は徹底的に考え議論するようにしています。


インパクト評価をする時には、事業そのものや製品開発におけるKPIも同時に決めていきます。その企業がどこを目指すのか、そのために何が必要なのかをロジックツリーのようなかたちに落としていくことで、目標をしっかり共有するように努めています。


インパクト投資が日本の成長の鍵を握る

ーーインパクト投資のマーケットは世界規模では約75兆円。日本国内でもインパクト投資額は伸びていて、2020年では5,126億円という数字が出ています。世界と日本での違いを感じることはありますか。

我々は海外でも共同でインパクト投資を行っているのですが、特にヨーロッパ系のVCは一歩先を行っていると思いますね。自分たちのポリシーをきちんと持って、投資前に環境インパクトを評価できるプレーヤーがごろごろいるなと感じています。


ーー日本でDT領域のインパクト投資に関わることの魅力はどんなところにあると考えていますか。

我々はDT領域こそが、今後の日本にとって大きな可能性になるのではないかと確信しています。日本からGAFAを生み出すのではなく、日立やHONDAなどのモノづくり系の企業で世界をリードする。これこそが、世界における日本の勝ち筋だと思っています。今後、海外の投資家もこの領域に入ってくるでしょうし、「インパクト評価を入れないと投資しない」という流れにもなってくるのではないでしょうか。


ーーインパクト投資に関心のある方やこの分野で働きたい方に向けてメッセージをお願いします。

いくらお金を稼ぐか、年収をどれくらい増やすか、といったやりがいもあるかもしれませんが、それ以上に「社会に本気でインパクト生み出したい」という強い思いを掲げながら、スタートアップの成長を後押しし、世界に羽ばたいていくプロセスを間近で見られるのは大きな魅力だと思っています。大袈裟かもしれませんが、自分の人生を終える時に生涯を振り返っても、「この分野に携わった経験は自分の人生にとってかけがえのないものだった」と思えるはずです。


ーーインパクト投資が盛り上がることで、さまざまな課題も解決できる。社会的にも大変意義があることですよね。

そうですね。しかし誤解してほしくないのは、インパクト投資はNPOではないということ。「ソーシャル性が高いからあまり儲からない」ではなく、収益の面でもシビアに考えているということです。社会課題を解決しながら収益を上げることが重要ですし、インパクト投資家はそういうところを見ている。インパクト投資であっても普通の投資以上の高い目標を設定している人も多いほどです。


ーー社会課題の解決を目指しながら、ファイナンシャルの部分でも結果を出して投資を進めていく。これまでの投資よりも難易度が高いので、当然タフな人材が必要ですよね。

インパクト投資はボランティア精神に溢れた人が増えると、あまりうまくいかないと思っています。社会に対して、次世代に対して意義のあることに取り組みたいという“思い“の部分はもちろん大切なのですが、だからこそしっかり結果を出し切ることが重要です。そういった意味では、個人的には大企業でしのぎを削りながら、売上や数字に執着して必死になってきた方などは活躍できるのではないかと考えています。


今後、インパクト投資はさまざまなプレイヤーが参入し、盛り上がる領域です。タフな環境で経験を積んできた方、この会社を成功させてやるんだという気概のある方にこそ、ぜひ飛び込んでもらいたいですね。



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